二人が居なくなって数日。
賑やかだったこの場所は…少し静かで、寂しい。
俺は相変わらず毎日バイトに行って、気づかない振りをした。
だって、俺は今の彼らに声をかけられるほど、人間として経験が無いから。
だからと言って事情も知らないで気休めの言葉が言えるわけがない。
俺は、臆病だから、何も言えず見ているしか出来なくて、其れが悔しくて、悲しくて。
けれど、きっと彼らは、近い未来に素敵な笑顔を見せてくれると信じて、祈った。
其れが、俺の出来る唯一の事だと思ったから。
俺自身は大切な人が居なくなるのは、これが初めてじゃない。
初めて好きになった人は、二度と再会できなかった。
その後好きになった人は、好かれていない事に気づいて自分から離れた。
彼が姿を見せなくなったのはその後直ぐだった。
恋じゃなく、友情関係にあった人も何人も疎遠になってしまった。
だから、これが初めてじゃない。
けど、寂しいなって思うんだ。
それは、純粋に大切な友達だと思っていたからだと思う。
けれど、その気持ちを誰にも言えず口を噤んで笑顔でやり過ごすのは、
彼らの決めた選択を、俺なんかの感傷で穢したくないからで。
だからこそ、今はそっと見守るしかないって思ってる。
しかし、その選択に言い様も無い感情を抱えてしまうのは
きっと、きっと、それでも寂しいから、大好きだから。
一人の部屋、制服を脱ぎソファに腰掛ける。
長い髪を掻き上げ、小さくため息をつく。
吐息は雪の結晶になって、暗い部屋に落ちた。
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