珍しく、俺は最後まで戦場に立っていた。
何時もならとっくに力尽きてる頃。
…まだ、戦える。
ポツリ呟く。
結晶輪を握り締め、立ち上がる。
移動中携帯で皆の戦況を確認する。
一人、また一人と確実に重傷になっていっているようだ。
(華火さんも重傷…今回もきついなぁ…)
確認したら近くの治療所のようだ、戦場に向かう前に顔出して行こう。
治療所に入ると怪我をした華火さんが居た。
でも、横になってなきゃいけないほどの怪我なのに、武装したままだった。
「畜生!俺は皆を守るって誓ったんだっっ!!」
「馬鹿…!そんな体のヤツに守られたって嬉しくないよ…!」
重傷を追いながらも出撃しようとする華火さんに怒鳴る。
…こんなに他人に対して感情を露にするのは初めてかもしれない。
怒鳴りながら泣いてしまうのも、初めてだった。
思い出しちゃったんだ。
俺に新しい世界をくれたあの子が、戦争で死んでしまったことを。
あの子みたいに、華火さんが死んだらと思ったら、涙が止まらなかったんだ。
その後、ひとしきり泣いて、泣きじゃくって。
華火さんも出るのをあきらめたようで。
「俺、華火さんの分まで頑張るからさ?…皆を、守ってくるよ。」
そう言って、赤い瞳で笑って。
医療所を後にし、俺は最後の戦場に向かう。
本気の戦いだから、本当の姿で。
銀の髪を靡かせ、敵を見据える。
守る為に戦い無事に終わらせて、皆の元に戻る為に…俺は、戦うんだ。
そして、無事に終わらせたら…華火さんに「大丈夫だったよ」って、報告に行こう。
そのときに、怒鳴った事謝らなきゃ。
…泣き顔は、忘れててくれたら良いなあ…流石に恥ずかしいや。
++++
・補足と言うか何と言うか。
アガサの初恋の彼女は男勝りで、新しい世界をアガサにくれた恩人。
初めて里以外の世界を教えてくれた人でした。
出会う前は雪女の里で人目に付かないように背中を丸めて人の嫌がる仕事を喜んで引き受ける子でした。
正体の知れないアガサは家族以外の仲間に迫害されてました。
家族は優しかったけど、だからこそ迷惑かけないために距離を置いてました。
そういう経緯があるので「自分が傍に居たら迷惑かける」と思い込んでいるし、
人と距離を起きがちだったりします、其処に踏み込んでいく人がいると好きになっちゃう模様w
因みに、彼女の外見にまねて化けているのが何時もの黒髪、
銀髪の雪女姿も其れが本当の正体ではない。
自分が何者かわからないけれど、それでも気にしないでくれた彼女が本当に好きだったようです。
そんな彼女を失った原因である戦争が、アガサは苦手です。
だからうっかりして重傷負ったりするんじゃないかな、何時もは。
今回は守る為にたってたんだよ、たぶん、きっと。
まあ、そういう感じの話らしいですコレwPR